火打今昔 其之壱

以前から興味があったにも関わらず、なかなか試す機会がなかった事のひとつに「火おこし」がある。
それはライターやマッチを使わずに火をおこす2つの方法で、ひとつは木の板に木の棒などをグリグリ
擦り付け、摩擦熱によって火をおこす方法。もうひとつは火打石などで火花を散らし火をおこす方法で
特に興味を惹いていたのが後者だった。ふとしたきっかけにより興味が再燃したので、いくつか道具を
用意し試してみることにした。










【火打石と火打金】
昔ながらのスタイル。某ネット百科事典によると、古事記に火打石に関する記述があるとの事で
奈良時代には既に使われていたらしい。石の種類はチャートや瑪瑙(メノウ)などで、これはメノウ。
その他に水晶などの石英類でも火花を散らすことが出来るようだ。火打金は鋼鉄製。両者を打ち合わせ
火花を散らすのだが、火打石によって削り飛んだ火打金の微小片が燃えて火花になる。
火打石なんて今時容易に入手出来るのか?なんて思って調べたら、ネットで普通に売られていたので
ココから買ってみた。神棚・神祭具 宮忠 楽天市場支店

物はこれと同じだが火打金の台が白木で、使っているうちに汚れが目立ってくるので
サンドペーパーを掛けてから焼きを入れた。


【ライトマイファイヤー ファイヤースチール・アーミー】
ライター石が大きくなったような物で希土類金属などの合金。ライターの発火石自体は1906年に
発明されたそうだ。付属された金属の板で擦って火花を散らすのだが、説明書によるとその火花は
瞬間3000℃にまで達し濡れていても低温下でも使用可能との事。某サイトでも謳われているように
現代版火打石と言って良いかも知れない。



【コフラン マグネシウム・ファイヤースターター】
これは遥か昔に買い何度か火花を散らしてみただけでずっと仕舞っ放しだった物。本体がマグネシウム
合金。側面のライター石のような物だけで火花を散らす事は出来るが、本体のマグネシウムを削り落とし
それに火花を散らせばマグネシウムが燃え、更なる着火力が得られるとの事。
ファイヤースチールにしてもそうだが、サバイバルグッズとしての印象が強いかも知れない。

取り敢えず上記3品を用意したが、これらの物だけでは単に火花を散らすだけで火はおこせない。
火をおこすには飛び散った火花を移して燃やす火種となる物が必要。
これを「火口」(ほくち)と言うのだそうで、火打石を売っていた所で火口も売られていたのだが
調べてみたところ簡単に作れそうだったので買わずに自分で作ることにした。
ちなみに作り方はココを参考にした。
その他に、火口に着いた種火を炎として燃え上がらせる為の物として、麻紐、ティッシュペーパー
そして枯草を用意したが、燃え易そうな物ならば何でも良いようだ。



火口の材料として用意した物はガーゼ(ガーゼマスクにて代用、ゴム紐を外し、大きさの都合で両端を
切り落とした)、使い古したタオル、着古したTシャツの3種類で、いずれも化学繊維を含まない
綿100%製の布。それらを適当な大きさに切り蓋に穴を開けた鉄製の缶に畳んで入れ、シングル
バーナーの上に乗せて加熱し蒸し焼きにする。理屈としては炭焼きと同じ方法のようだ。
この方法以外に、材料に直接火を着けある程度燃やしてから缶に入れて密封する「消し炭方式」もある。


火口材料(右から順にTシャツ、ガーゼ、タオル)


加熱しているとやがて缶の蓋に空けた穴から煙が出てくるが、この煙は火をつけると燃えるので周囲に
あまり煙を立たせたくない場合は燃やす。風に煽られるとすぐ火が消えてしまうので風防必須。
時間は計っていなかったので分からないが、穴から煙が出なくなった頃を見計らってバーナーから
下ろし缶を冷ます。


焼き上がった火口3種、右からTシャツ、タオル、ガーゼの順。タオルは量が多かったせいか、角の
辺りが炭化しきれていない。このような布製の火口を海外ではChar cloth(チャー・クロス)又は
Charred cloth(チャード・クロス)などと呼ぶようで、訳すと「黒焦げの布」となる。ってそのまんまか。

ここからが火おこしの作業。
火口に着火したらすぐに火をおこせるよう麻紐を適当な長さに切りほぐし、枯れ草の束の中に入れた
物を先に用意しておく。真ん中の窪みが火の着いた火口を入れる所。


次はいよいよ着火、まずは火打石で火口3種を試す。
火打石を利き手の反対の手に持ち、打撃ポイントから数ミリ離した所に小さく千切った火口を置き
親指で押さえる。火打金は利き手に持つ。


飛び散った火花が火口に乗り、赤く燃え出すまで何度か火打石を打つ。
石の角になった部分に火打金を打ち付けるのだが、ただ力任せに打ち付ければいいという訳でもなく
少々コツがあるようで、石の鋭角になった部分に火打金を削ぐように打ち付けると良いようだ。
最初はただ力任せに打っていたが、コツが分かってくるとそれほど力を入れなくても上手く火花が散る。
たまに砕けた火打石の小さな欠片が顔の方に飛んで来る事もあるので、目に入らぬよう注意が必要。
両手が塞がってしまうので火花が散っているところの写真は無いのだが、唯一火花が上手く乗ったのは
ガーゼの火口だった。Tシャツとタオルで作った火口は何度やっても火が着く事はなかった。
まだまだ焼きが甘かったのだろうか? 繊維が詰まっているからなのだろうか?
よく分からないので後の課題としておく。



火花が乗った火口はいきなり炎を上げることはなく、炭が燃える時のように赤みがジワジワと
広がるように燃える。そのままにしておくと赤みが小さくなるので、消えぬよう少し息を吹きかける。
かつての日本ではこの火を薄く削った杉や松の木片に硫黄を付着させた「付け木」という物に燃え
移らせていたようだ。付け木も火口同様、現在市販されているので入手は可能だが、硫黄を使っている
ので一般の人が自作するのは面倒、難しいかも知れない。今回はほぐした麻紐の中に入れて静かに息を
吹きかけ、ある程度燃え広がったら吹きかける息を少し強めにし炎を立ち上がらせる。

 
割と簡単に火おこし成功。
キャンプ中ならば後はこの火を元に薪を燃やすなり炭を熾すなりするのだが、今回は自宅での実験
だったのでこのまま水を張ったバケツに放り込み消火。

取り敢えず今回はここまで。
次回はファイヤースチールとマグネシウム・ファイヤースターターでの火おこしに挑戦。


火打石セットあれこれ

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by swedishcooker | 2008-12-02 21:10 | ■道具
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